学生時代に半導体設計を専攻した社員

アナログ(回路)設計/江藤慎一郎(Eto Shinichiro)2006年度入社

大学の研究と、会社での製品づくりは信頼性の考え方が異なっていた

大学では半導体のアナログ回路設計やプログラミング、製造プロセスなどを学んだので、そのスキルを一番いかせる会社を選びたいと就職活動中は考えていました。実は修士1年の時に、インターンシップ生としてソニーLSIデザインで設計の仕事を経験していたので、ソニーLSIデザインの仕事に私のアナログ回路設計技術がいかせることは確信していました。しかし入社を決意する決め手になったのは、エンジニアの人たちが上司に対して、役職を意識せず、ごく自然に質問や提案をする、風通しのよい職場の雰囲気でした。こういった環境であれば、思う存分自分のやりたいことができるのではないかと思ったんです。
入社してみると、大学と企業では同じ設計でも、まったく違う視点、目的で行っていることに気づきました。大学では、自分が考察したことの正しさを設計することで確認、証明していました。しかし会社では、市場に出て多くの人に買ってもらい、安心して使ってもらえること、そして喜んでもらえることが最も重要で、それを実現するために設計をおこなっています。そのためには当然、簡単に故障しないように設計しなければなりません。もし壊れたら利用者が困るばかりでなく、ソニーのブランドに傷がつくことにもなるので、責任は重大です。大学時代は、信頼性を念頭に設計することはほとんどなかったので、このような信頼性についての考え方の違いにとても驚きました。

腕時計に組み込むGPSデバイスを設計。あらゆる施策で試行錯誤しながら最後に目標達成

わたしは入社してからずっとアナログ回路設計をやっていますが、これまで携わった仕事の中で特に印象に残っているのは、腕時計に組み込むGPSデバイスをつくったときのことです。腕時計なので、その中に搭載するデバイスはもちろん小さくなければいけないし、消費電力も抑えなければならない。そしてその時は、なによりノイズの低減に対する要求が非常に厳しいものでした。腕時計は人が身に着けるものですから、高い山や寒暖の差が激しいところなど、さまざまな使用環境を想定しなければなりません。ノイズは周囲の環境からの影響を受けやすいので、最初からできるだけ小さく抑えこむ必要がありました。
最初の設計では、やはり不具合箇所がありました。何が悪かったのかを考えて再設計、評価してみるとまた問題が見つかり再々設計と、何度も設計と評価、試作を繰り返した末に、やっと目的を達成できるデバイスが出来上がったときにはとてもうれしかったですね。
このときには、考えられるあらゆる施策を盛り込みました。アナログ回路設計の最適化だけでなく、他部門との話し合いで、GPSを使わないときはデバイスに電流を流さないようにするなど、システム部分の変更もおこないましたね。その結果、ノイズは最初に設計した時よりも、はるかに低いレベルに減らすことができました。

アナログ回路設計の3つの課題をクリアしたときが最高の喜び

アナログ回路設計の主な課題は、消費電力低減、ノイズ抑制、コンパクト化の3つです。これら課題をクリアすることがエンジニアの喜びです。それぞれ相反する部分もあり、課題解決はかなり難易度が高いです。例えばトランジスタを積む数を減らせば電圧を下げることができますが、減らした分だけ性能も低くなります。そのためチップ全体の性能への影響が最小限になるように考慮する必要がありますが、なかなか思ったようにはいきません。設計、評価、再設計ということを繰り返しながら徐々に目標値に近づいていきます。狙い通りの特性が実現できたときはうれしいものです。

高い目標に近づくために設計効率を上げていく

自分の目標は、いまある半導体デバイスの性能を維持したまま、消費電力を10分の1にすることです。簡単に実現できることではないので、目標を達成するまでには時間がかかります。その時間を捻出するためには、設計効率を上げることが求められます。回路設計にはトポロジーという、いわば回路構成の定石集のようなひな形を使うことがありますが、新しい優れたトポロジーを開発して、設計のプロセスで流用すれば効率は上がります。製品化に向けた設計を行うことも大事ですが、一方で新しいトポロジーを開発できる人を増やしたいと思っています。
また、もう1つ大事だと思うのは、人に言いたいことをきちんと伝えるスキルですね。例えば、一番言いたいポイントを最初に言うと、思いがストレートに伝わりやすくなります。そういったスキルを磨いておくと、お客さまからの要求仕様に対して、自分が考えた提案を、相手に納得してもらいやすくなるはずです。
要求仕様の妥当性について、気がつくところがあれば提案して仕様に漏れがないようにしておけば、後々の工程で手戻りが少なくなります。そのためにも、早く「人に伝える」スキルを身につけたいですね。

社員が語る開発業務
  • 近藤弘康(CMOSイメージセンサ設計)
  • 城本正尋(デジタル回路設計)
  • 江藤慎一郎(アナログ設計)
  • 劉リッシン(ソフトウェア設計)
  • 牛丸裕子(バックエンド設計)
  • 吉川隆弥(テスト・評価・解析)
  • 轟聡洋(設計環境構築)
PROFILE 入社当時は自分のスキルアップのために、先輩との議論を繰り返し、各種の関連論文を1年で36本読破した。休日は2人の子どもと奥さんを連れ、横浜のみなとみらい地区や東京の観光名所などを散歩するのが楽しみ。趣味はランニングとテニスだが、家でのんびり過ごすのも好き。